会いたかった! アニメになった少女たちよ 〜テレビアニメAKB0048レビュー〜

t-akata2012-09-25

希望について、僕は語ろう
今や日本人で知らない者は居ない、テレビ・ラジオ・雑誌に登場しない瞬間は無いというほどの国民的アイドル、AKB48
その彼女たちを題材としたアニメが4月から放送されていた「AKB0048」だ。
本作が発表された当初、「実在の人物、ましてやアイドルのアニメ化なんて企画、どうせ上手く行きっこないだろ」と誰しも思っただろう。
だがフタを開けてみたらどうだ。
AKB48は「マクロス」シリーズや「アクエリオン」を手掛ける河森正治氏らの手によって「芸能を禁止された宇宙を駆け巡り、会いに行くアイドル・AKB0048」として我々の前に現れた。
彼女たちは、人類が宇宙に進出し、芸能が厳しく制限された未来で、初代AKB48のメンバーたちの志と名前を受け継ぎ、愛を届けるために銀河をゆく。
「ここまで変えちゃって、AKBである必要あるの?」とも思われるかも知れないが、この形こそがAKBをアニメにするにあたり、河森総監督らが導き出した最も適切な答えなのだ。


クリエイターたちを魅了する、AKBの魅力「ガチさ」とは
「誰が誰だかわからない」「CDに選挙券や握手会券を付けるアコギな商売」「テレビ出すぎ」「よくネットニュースを騒がせる」……世間一般のAKB48のイメージは、メジャーがゆえにネガティブなモノも多い。
その一方で、アニメ業界に関わる人々の中には、アニメが始まる前からのファンだった岡田磨里や堀江由衣、アニメ企画をきっかけにして好きになった河森正治らなど、AKB48に注目している人たちも少なからずいる。
彼らを引き付けるAKB48の魅力とは何なのだろうか。
河森氏はAKB48の魅力について、「舞台裏もひっくるめて何もかもオープンにしていること、総選挙の重圧、握手会での交流、様々なムチャ振りなどが、彼女たちを常に鍛えている」からであると分析している。
握手会で大量のファンと交流するということは、次々に現れる老若男女様々なファンに対して瞬時に頭を切り替えて応対する必要がある。
また、メディアに出続けているということは、バラエティ番組や企画など、多角的な要求に常に答え続け無ければならないということである。
そしてその先に、それらすべての「結果」が、「ファンの前で晒される」日、が待っているのだ。
一つの順位の差が、選抜かそうでないか、スポットライトが当たるか当たらないかを左右するのだ。
外側から見れば、「ただのアイドルの企画の一部」にしか見えないかもしれないが、ちょっと近づいて観てみれば、これが彼女たち一人一人が人生を賭した、それぞれの「ドラマ」であることが、否応なしに分かってしまう。
そこから伝わる「ガチさ」が、多くの人々を魅了しているのではないだろうか。


キャラクターの成長と少女たちの成長とかシンクロするとき、次元の壁は打ち破られる
AKB0048のもう一つの目玉として「48グループのメンバーから声優を志望する声優選抜を選出し、声優として参加させる」というものがある。
ともすると「アニメそのものがAKBの販促かよ」とも受け取られかねないこの企画だが、そこは中島愛マクロスFで発掘し、スターに押し上げた河森正治氏のこと、AKB0048を「アイドルのレギュラーメンバーを目指す研究生の物語」とし、未成熟な所からの成長を描いてみせた。
ここに私は重要なポイントがあると考える。
声優選抜のメンバーらは、ほとんどが声優経験の無い者で占められていて、実力はまちまちである。
しかし、回を重ねるごとにはっきりと上達していくのが分かるのだ。
声優選抜のメンバーは、グループ内ではもう「研究生」ではないが、声優としてはまだまだタマゴの状態、言ってみれば「声優の研究生」である。
そう、これはアニメの中の「2次元の研究生」の成長ドラマであると同時に、声優選抜たち「3次元の研究生」の成長ドラマでもあるのだ。
アニメの中で襲名メンバーの背中を追いかける「AKB0048の研究生」が物語の中で成長していくと同時に、ベテラン声優たち先輩の背中を追いかける「声優の研究生」たちが役を掴み技術を身につけ成長する。
アニメの中の「成長」だけでは「あらかじめ作られた物語」であるため、リアルなモノとして受け取るには限界があるが、そこに現在進行形の3次元の「成長」をリアルタイムでシンクロさせることにより、2次元の中の「成長」を、よりリアルに受け止めさせることができる。
つまり、声優選抜メンバーたちの成長を見守ることにより、我々は2次元に届くことができるのだ。


2013年、君は神話の目撃者となる
総選挙や結果の見えないムチャ振りに代表されるように、AKB48は河森氏の言葉を借りれば「カオスに委ねられている」側面が強い。
これはそのものが企画のウリであると同時に、基盤にもなっていると河森氏は分析している。
「カオスに委ねる」こと、すなわち大勢の人間の意志の中に放り込むことで「集合的無意識にアプローチできるのではないか」と。
集合的無意識」とは「人類が誰しも備える普遍的な価値観」(Wikipediaより)であり、「長く語り継がれている神話や民話にはそれが内包されている」と言われている。
そしてAKB48には「そこに近づくための機構が備わっている」と。
現実のAKB48が神話になるかどうかは分からない(それこそカオスに委ねられている)。
だが、AKB48という原石を与えられた河森氏が、新たなる「神話」に磨き上げようとしていることには間違いない。
2013年のセカンドシーズン(完結するのかどうかは分からないけど)で新たに打ち立てられる神話がいったいどのようなモノなのか、刮目して待ちたい。


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