「アニソン」は本編を牽引できるのか。WORKING!!に見るANIPLEXの販売戦略

「アニソン」は本編を牽引できるのか

けいおん!!OPEDの週間売り上げランキング1位2位独占が注目を集めている昨今、この勢いに引っ張られてチャートに顔を出していてもおかしくないはずの曲の姿が見当たらない。
市場にはすでに出回っているはずの「WROKING!!」の主題歌だ。


本作はヤングガンガンで連載中の同名漫画のアニメ化作品であり、この4月から放映がスタートした。本放映に先立ち、第1話を先行放映するなど、意欲的な試みがなされており、DVD販売の方でも「第1話のみ収録、主題歌CD同梱で4月21日発売」と、これまでにない販売方法を展開している。
アニメ(に限らずだけど)のソフト販売において、「いかに1巻目をたくさん売るか」というのがシリーズ全体の販売数を左右する大きな要素だというのは、その道のファンであるなら周知のことだろう。オムニバス作品のような例外を除けば、まず1巻を買わない人は以降の巻を買わないし、逆に1巻を買った人は、全巻購入してくれる可能性が生まれる。
第1巻を何が何でも買わせるために、売る側はあの手この手でファンの心を引かなければならないのだ。
そのため「値段をとことん安くする」とか「限定版フィギュアを付ける」とか、何かしらの取っ掛かりとなれる要素を付加して発売されるのが第1巻なのだが、このWORKING!!では、「第1話のみ収録」、「放映スタート月の下旬という異例の早さでの発売」などのトピックスに加えて「主題歌CD同梱」という特典を付けている。しかもこのOPとEDを収録したCDは、一般発売の予定は無く、このDVDでしか手に入らないという。
WORKING!!の主題歌は、OP、EDともにキャラクターを演じる複数の声優が歌う、いわゆる「声優合唱系」だ。OP「SOMEONE ELSE」はメインの女性キャラ3人(種島ぽぷら:阿澄佳奈伊波まひる:藤田咲轟八千代:喜多村英梨)、ED「ハートのエッジに挑もうGo to Heart Edge」はメインの男性キャラ3人(小鳥遊宗太:福山潤佐藤潤:小野大輔・相馬博臣:神谷浩史)といった布陣で、作品のファンや声優のファンをメインターゲットにしている印象が強い。一般アーティストを起用せず、どちらかというとキャラソンの延長のような位置付けだからこそ、このような仕様で発売できたのだろう。


しかしながら、アニソンをDVD販売の牽引役に持ってくるという戦略は果たして正しかったのだろうか。
たしかに、「CDが売れなくなっている」というこの時勢に、「確実に一定数売り上げが見込めるCD」として存在感を強めている「アニメ主題歌」をDVD販売の売りにすれば、DVD販売そのものは伸びるだろうが、この方法では、「主題歌」そのものが拡散しにくいのではないだろうか。
DVD1巻の値段は3000円だが、「主題歌CDをOP・EDそれぞれ1000円ずつで買ったとして1000円分相当の本編DVDが付いてくる」という見方をすれば、それほど割高感は無いだろう。普段CDしか買っていない層にもそれほど負担にならないはずだ。
だが、肝心なのは「CDとして売られていないこと」の方だ。CDとして売られていないばかりに、レンタルすることはできないし、カラオケに配信されるのにもおそらく遅れる。そして何よりオリコンにランクインしない。
主題歌の認知度がDVD販売にどこまで貢献するのか、その因果関係については明言できないが、一般アーティストとのタイアップではない、いかにも作品そのものを表しているWORKING!!の主題歌が、他メディアに拡散する機会を減らしてしまっている点は、マイナスなのではなかろうか。もちろん、別々に販売した場合と同梱した場合とで天秤にかけた上での判断なのだろうが、それでもこの曲がランキング番組で聴けないというのはやはり惜しい。
今期は「けいおん!!」にすべて話題を持って行かれることが確定しているようなものだが、それでもアニメファンとしては、「アニソンが何位にランクインするのか」というのは楽しみだし、番組にとっても一つのステータスとなっている風潮があるだけに、残念だ。
アニソンファンからは不満が噴出していそうな販売方法ではあるが、業界全体を盛り上げてくれる材料と成り得るなら、今後の動向を見守りたい。
ただ、記録メディアがDVDからBDへと代ろうとしているこの時期に「DVDのみ」での展開しかされないという点は、あまりプラスの材料とはならない気はする。
やるにしても市場がBD主流になってからでも良かったんじゃないかと思わずにはいられない。


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