アニメ評の評

t-akata2009-10-22

化物語だからという理由で買ったわけじゃないんだけどね。
オトナアニメ」は本当に読み応えのあるアニメ評です。
読み飛ばせるような記事がほとんど無い。



どうせアニメにハマるなら、できるだけ高度な視点とDEEPな掘り下げ、そしてアニメへの愛に溢れた批評を読みたいと思い、あれやこれやと探し回った果てに手に取った本が「オトナアニメVol.13」でした。


 アニメを主題に扱っておきながら、本編写真は少なく、描き下ろしピンナップなども無い、ただひたすらにスタッフサイドのインタビューと作品評にページが割かれている体裁がとても潔く、それでいて無論のこと、内容も面白かった。


 アニメがどのように作られ、我々の元に届いているのか、そこに注ぎ込まれているスタッフの思いやこだわりを知ることができ、アニメをさらに好きに、もっと観たくさせてくれる、とても魅力的な本だと間違いなく言えます。。


 アニメを愛する者が同じくアニメを愛する者へ向けて作った、強烈なメッセージとして受け取りました。「どうだ!アニメってすごいだろ!?もっと好きになっただろ!?来月からの新番組も全部チェックしようぜ!!!」と、語りかけてくるようでした。


 手の伸ばせる範囲が限られているのか、メインライターの意向が色濃く出ているのかはわからないけど、とにかく本の作りが「媚びてない」。


Vol.13、14と読んだけど、巷で人気の京都アニメーション作品に一切記事を割いていない。みんなもれなく見ている上にそれなりの評価をしているであろう。それでいて言いたいことも山ほど出てきていることは想像に難くないし、そもそも誌面で取り上げれば(表紙に作品名が載れば)確実に売り上げの一端に貢献できるであろうに、「敢えて」なのだろうか、どこにもそんな記事は見当たらない。
 アニメなんていうマイナーなジャンルを扱っておきながら、さらにその中でもニッチなマイナー路線を突き進んでいるようにも見えるが、それでいて「現代視覚文化研究」ほどリビドー寄りでもなく、「CONTINUE」よりも掘り下げている。この絶妙な「深度」とでも言うべきだろうか、「新作アニメはとりあえずチェックして、良作をチョイスして見たい」というスタンスに非常に合っている。
 アニメ制作を華美せず、「多くの人が携わって生み出されるプロダクト」としてとらえ、「それぞれの工程に関わる職人(!)の仕事を紹介する」という立場から取材しているように感じられて(飛躍しすぎか?)非常に好感が持てる。
 アニメの「絵が好き」とか「キャラが好き」とか「声優が好き」とか、そういう次元より一歩進んだ「アニメそのものが好き」という人に向けて作られた本物の批評本だと断言できる。
最新刊が品薄状態なのも納得がゆく内容です。
未読の方は、是非、一度お手に取っていただきたい。
手に入りにくい状態のようですが、特集されている化物語はじめシャフト作品を復習しつつ、待つと良いかと思います。