今期のアニソン評

t-akata2009-11-07

とある科学の超電磁砲
OP:only my railgun / fripSide
恋姫無双OP以来のTVアニメソングは
声優・南條愛乃をボーカルに据えての再メジャーデビューナンバー。
トランサブルでハイスピードな楽曲に乗せて
透き通るような、それでいて鋭く突き刺さるような力強さを持った歌声が
文字どおり「撃ち出される」超電磁砲のテーマにふさわしい楽曲となっている。
打ち込み系のサウンド南條愛乃の声質の親和性がとても強く、
A・Bメロからサビへ向かう盛り上がりはカタルシスすら感じさせる、
今期アニソンの中でも最高峰の1曲。
ヘッドフォン推奨。


WHITE ALBUM
OP:夢幻/水樹奈々
ED:赤い糸/Suara
いよいよ泥沼の深みへと雪崩れ込む物語の始まりを飾るのは、
前作OPよりもさらに激しい情念のほとばしりを感じさせる
水樹奈々の「夢幻」。
主人公をめぐる愛憎劇の一翼を成す緒方理奈を演じる本人の作詞ということもあり、
登場人物の心情に沿った歌詞が綴られ、切なくも重厚に歌いあげられている。
これから繰り広げられる物語の苛烈さを予感させる楽曲。
オリコン初登場3位おめでとうございます。

対するEDは印象的なギターソロから始まるSuaraの「赤い糸」。
こちらも物語のヒロインたちの心情を表すような儚げな詞を、
芯の通ったボーカルが「聴かせる」1曲だ。
ホワイトアルバム後編のOP・ED楽曲構成は、
驚くほど本編の展開との親和性が強く、
OPでこれから始まる愛憎劇を予感させて本編に入り、
EDではまたしても積み重ねられた主人公の不実をヒロインの視点から噛みしめるといった、
アニソンのお手本のような、奇跡のような模範的な構成となっている。
ここで個人的な妄想を挟み込んで恐縮だが、
これほど本編とのシンクロが強いと、
どちらの楽曲も「緒方英二」がプロデュースし、
ギターを担当しているように聞こえてくるから不思議だ。
全てを知っていて、あえて主人公やヒロインたちに思うがまま生きさせている。
そんな緒方英二が楽曲のみならず
作品そのものも手掛けているかのような錯覚を覚えさせられる。
本編の内容には賛否あるだろうが、
物語とのつながりの強さという点ではアニソンとしての役割を十分に発揮している名曲である。


劇場版マクロスF
挿入歌:pink monsoon/シェリル・ノーム starring May'n
マクロスの挿入歌ということで、
激しいバトルシーンを彩るアッパーな楽曲を勝手に期待していただけに、
ちょっと拍子抜けした感のあるゆったりめのナンバー。
劇中ではシェリルのデビュー曲という設定なので、
これくらい抑えめなのが正しいんだろうけど、
May’nの新曲としてはやや物足りなさが否めない。
とはいえ
新しい曲のたびに菅野よう子が設定したハードルを確実に超え続けている彼女が、
また一つ新しい表現方法を獲得し、成長しているのを感じられる1曲でもある。


love your life/豊崎愛生
タイアップでは無いけど取り上げておきます。
これまで主にキャラソン中心で活動してきた豊崎愛生が、
初めて本人の名義で出したシングル。
声質そのままのゆったりした楽曲は、
彼女の「ほわほわ」した魅力をよく引き出している。
しかしながら、これまでのキャラソンと比べてみると、
やはり「キャラ」を取り去った「豊崎愛生」だけの歌としてはまだ「弱い」感が否めない。
思うに、これは彼女がキャラソンを「キャラを演じる延長」として
自分なりに深めたキャラとして、
同じくキャラを深めて作られた曲とシンクロして歌いあげているのに対して、
豊崎愛生」本人の方は、
まだまだ本人も作曲する側も「豊崎愛生」を引き出す方法を探している最中だからなのではないだろうか。
豊崎愛生の魅力が「ほわほわ」した感じだというのは、
共通の認識だろうが、
それは決して雲のような捉えどころのない浮遊したものではなく、
しっかりと芯の通った、凛と咲いて人の心を和ませる花なのだ。
今回のシングルではまだ完成されていないと感じたので、
キャラソンのような魅力をソロの方面でも引き出すことができるかどうかは
これからの活動に注目してゆくしかない。
正直なところ、アニメの方にたくさん出てほしいところではあるけれど。