0+39

t-akata2009-11-18

マクロスプラスシャロンを見ていて、
ふと「そう言えば、この時代は『バーチャルアイドル』なる言葉が流行っていたなぁ」
と思い起こした。


そもそも「バーチャルアイドル」って何だったっけ?


当時の記憶をたぐって行ってみると、
何となく「CGで出来ていて、動く、踊る、歌う。すごいとは思うけど、アイドル的にはどうだろう?」
みたいだった気がする。


それでもまぁ「すげえすげえ」ともてはやされていたのは、
おそらく「CGで人間っぽいものが作れるところまで来たんだぞ!」
というアピールの手段として「バーチャルアイドル」なんて呼び方をしてしまったがために、
「技術的な側面」に対して「バーチャルアイドルはすごい」と言っていたのが
「アイドルとしてすごい」すなわち「魅力的だ」という評価として受け取られ、
しばしば混同され続けてきたからなのかもしれない。


当時の私は、
「こんなもののどこが良いんだ!?銀河お嬢様伝説ユナの方がよっぽどいいじゃないか!」と憤っていたわけです。
あの頃はそんな分析などすることも無く「気持ち悪い」と評するだけだったなぁ。
いや、銀河お嬢様伝説ユナに心酔して
限定PHSとか持ち歩いていた中学生も十分気持ち悪かったんですけどね。
そんな中二病闘病録はさておき(現在も闘病中です)、
バーチャルアイドル」という単語からSF方面に膨らんだイメージが、
シャロンのような「実体は無いが人間と同じパーソナリティを持った歌手」の発想まで至らせたわけだが、
これを現在のキャラクターに照らし合わせてみるとやはり「初音ミク」がもっとも近い位置にあると考えられる。


架空のキャラクターが電子制御で歌う。
聴く者も「初音ミクが歌っている」ものとして聴く。


サンプリングした声を使っていることや、
歌い方も作り手のプログラムした通りだという点など、
まだまだマクロスプラスの時代までは追いついていないけれども。


さて、劇中で絶大な人気を誇っているアイドルと、
現実に絶大な人気を誇っているボーカロイドを比べてみると、
決定的に違っているところがある(技術面じゃなくてね)。


シャロンは「感情プログラム」を持ち、常に学習し、
それに基づいて歌を表現していた(設定上は)。


対して初音ミクは、当たり前だけどそういうものは持っていない。
もっと言うと「性格が決まっていない」。


この辺の話(なぜ初音ミクはヒットしたのか)はwikiとかに任せるとして、
初音ミクはそれ自体が膨大な二次創作設定の塊であり、
個々のユーザーの希望や願望がかなりの割合で盛り込まれているため、
「みんなで育てた」共通意識も手伝って、
強大な支持を得ているわけだ。


ここが、出て来ては消え、出て来ては消えていった数多のバーチャルアイドルと違う所だ。


考えてもみれば、せっかくゼロからアイドルを作れるような時代になったのに、
作り手が何もかも設定を固めた上で発信してしまっては、
受け取る側にしてみればその辺の生身のアイドルと対峙するのと何ら変わらない。


それとは逆に、最低限のキャラ設定しか持たない初音ミクは、
プロデューサーの楽曲次第でどのようなキャラにも変わることができる。
初音ミクの歌を聴いた者が、その楽曲や歌い方(歌わせ方)から、
曲の向こう、スタジオのマイクの前に立つ初音ミクのキャラクターを想像するのだ
(ニコ動ではイラストも重要ですが)。


リスナーは、自分の好きな初音ミクの歌を聴き、
その歌の通りの(もしくはそんな歌を歌えるパーソナリティを持つ)
理想的な初音ミクを思い思いに投影することができる。
言いかえれば、
初音ミクは、ある人にとっては「ワールドイズマイン」であり、
ある人にとっては「歌に形は無いけれど」の初音ミクなのだ。



「アイドルを個人個人の理想のままに作ることができる」。
この延長上にマクロスの時代が来たならば、
マクロス世界の「バーチャルアイドル」像も違ったものになっていたかもしれない。


従来の「個」でしかないアイドルと、電子制御の「全能」的アイドルの対決の行方は…とか。


おっと、話が超時空密教的になってきてしまいましたが、
まあ、「ランカやシェリルと初音ミクが対決したらおもしろいよね」っていう話ですよ。
そこから先はもう河森監督の脳に全部お任せです。



そう言えば、初音ミクと同じように「ユーザーの希望を反映する」システムで成功しているゲームとして「ラブプラス」があります。
妄想ですが、これに初音ミクが登場しようものなら、とんでもないことになるような気がします。
「絶対買う」とか「熱烈に希望する」とかいうレベルじゃなく、
「みんなでコナミとクリプトンの株を買いまくって、実現できるように仕向ける」
レベルだと思います。



いつか「俺だけのミク」が手に入る時代が来ますように。