ランカちゃんを勝たせる方法を真剣に考える

t-akata2009-12-21

公開からはや1ヶ月が過ぎた劇場版マクロスF
私もシェリシェリルMay’nMay’nと、銀河の妖精を推しまくってまいりましたが、
いくら後編の巻き返し展開が用意されているにしても、これでは超時空シンデレラ、ランカちゃんの立場が無いというもの。
しかしながら、前編ですでにシェリルがかなりのリードを稼いだのも事実で、正直な話、「ここからどうやって逆転するんだ?」と思っている人も多いんじゃないでしょうか。
TV版のランカのこの後の活躍と言えば、ゼントラーディの紛争地帯に「星間飛行」で降臨し、「キラッ☆」で一躍スターダムを駆け上がるところぐらいで、後は敵であるバジュラとどんどん心を通わせてゆくという、およそ恋愛におけるアドバンテージを感じさせない高みへと昇ってゆきます。
キャラクターとしての魅力はあるにしても、ストーリー上「この娘にアルトは(というか、特定のパートナーは)必要なのだろうか?」と思わざるをえないほど、人間離れした、超越した境地まで一人で踏み込んで行ってしまっていました。
でもやっぱり、ランカちゃんのファンなら、最後は幸せになってもらいたいもの。
というわけで、ランカちゃんがアルトと幸せになる方法を、真剣に考えてみました。
「一夫多妻制」とか「人類を超越して究極的な幸福感を得る」とかの超展開は無しの方向で。



マクロスFの三角関係を振り返ってみる

ランカちゃん逆転のシナリオを妄想する前に、改めて3人のキャラクターと三角関係におけるポジションを確認しておこう。
本作の三角関係は、一人の男と二人の女からなる三角関係である。
この状態で「男が主人公」となれば、必然的に「どちらの女を選択するのか」という命題をめぐってストーリーが進み、どちらかが選択されることを視聴者は期待する。
だが実際はそうはならなかった。
その理由の一つに「超えられないほど大きな“設定の壁”」があったのではないかと私は考える。

マクロスFという物語は、バジュラをめぐるフロンティアとギャラクシーの思惑のぶつかり合いを大展開として描き、その中で二人の歌姫とパイロットの恋模様が描かれるという、主に二つのラインで物語が進行する。二つのラインは全く別のものではなく、様々なポイントで密接にリンクし、相互に影響し合っている。特に、ランカやシェリルの「歌」がバジュラとのコンタクトに大きな役割を果たしている点や、二人の生い立ちなど、最終的には「大展開」の方に影響を与えるまでになっている。
詳細に見てみると、ランカは、バジュラ研究者である母親の胎内でV型感染症に罹患するも、菌が腸に定着したことで共生することになり、歌うことによってバジュラとコンタクトすることができるという、特殊な存在だ。
シェリルも、「マクロスゼロ」のキーキャラクター「マオ」を祖母にもち、こちらもバジュラ研究者の娘である。ランカとは異なり、後天的にV型感染症に罹患したために、たびたび発作に見舞われるが、最終的にはランカの助けを借りて細菌を腸に定着させる。
どちらも、ギャラクシーの陰謀に絡んで肉親を亡くしている。

対してアルトはと言えば、歌舞伎の名家に生まれ、幼少の頃から舞台に立つなどしてきたが、厳格な父への反発から、パイロットを志し、S.M.S.に入隊する。

なんつーか、キャラクターのバックグラウンドの釣り合いが取れてなくね?

かたや肉親をほとんど失い、その元凶となった物へと立ち向かわんとする女二人に対し、
片親を亡くしてはいるものの、家に守られてぬくぬく育った上に、それに対して不満を垂らし、「超時空気主人公」の肩書きを欲しいままにしている男一人である。

苛烈な過去を背負った「強い」ヒロインを、いいところのボンボンが「選ぶ」なんて立場に立てるものだろうか。
それ以前に、それだけ異なった出自の男女が、何かしら一致する価値観を持ち得るのだろうか?
恋愛を成立させることすら困難な土台なんじゃないだろうか。

だからといってマクロスFの三角関係を根本から否定してしまっては、ランカちゃんの逆転も何も無い。

そう、ランカちゃんが逆転するためには、文字通り発想の逆転が必要なのだ。



●超時空シンデレラから超時空王子様へ

逆転の秘策、それは
「ランカちゃんを主人公にすること」
である。

「そうなったらアルトと結ばれるのは当たり前じゃねーか!お前の願望か!」
と思われるかもしれないが、少し落ち着いて欲しい。
ランカちゃんを主人公に据え、その視点でキャラクターや物語を展開させると、「中途半端な男が流されながら2人の女の間をフラフラする」ストーリーが一転、「アルト君へと続く超銀河ラブストーリー」へと変貌するのだ。

そもそも、「バルキリーの操縦」という点を除けば、ランカちゃんほど主人公的素養にあふれたキャラクターはいない。
歌手を志し、ステップアップしてゆく様子は、視聴者の最も感情移入しやすいポジションである。
「実は重大な出生の秘密を抱えており、それをめぐって争いが起きる上に、その事態を左右するほどの力を秘めている」点など、ヒロインどころかヒーローの位置に置かれてもおかしくないキャラクターだ。

そしてシェリルもまた、好敵手的素養にあふれたキャラだと言える。
「主人公」ではない、「好敵手」だ。
当初は「完璧な存在」として登場し、「ランカの超えるべき壁」となるが、徐々に「意外な一面」を見せつつ、主人公とぶつかりあう。
「実は主人公と似たような出自を持ち、それゆえに苦しむが、最終的には主人公の力を借りて克服し、共闘する事になる」
こんなにも好敵手なキャラがいたものか。
シェリル派の人には不満かも知れないが、シェリルは「徐々にデレを見せてゆく」ことが魅力的なキャラなので、「シェリル視点」となってしまうと、なかなか魅力をアピールしづらいキャラだと思うのです。

最後に「主人公」でなくなったアルト姫ですが、もうそのまんま姫ですね。
由緒正しき家柄に生まれ、厳しい教育を受けてきたが、そんな生活に嫌気がさして家を飛び出してしまう。
うーむ、やはりわがままお嬢様系のキャラ設定だ。
しかも動機が「空を飛びたい」と来たもんだ。
「空を飛びたい」という願望は、そのまま「自由になりたい」という心理の表出とも取れる。
このポジションについてしまうと、三角関係においては「受け身」になりやすく、2人のどちらかを「選ぶ」とはならず、「勝った方と結ばれる」という流れになりやすい。

こうしてみると、マクロスFの三角関係を構成する三人のキャラクターは、立場を変えてしまえば、実に分かりやすいストーリー展開にできる下地が作られていたのだ。



マクロスF三角関係の起源はあの名作RPG!?

そしてこの三角関係に良く似た配置の物語が、他の作品にも存在する。
私が真っ先に思い当たったのは「FF4」だ。

主人公のセシルは孤児として育てられるも、なんやかやで暗黒騎士にまで出世して、旅の途中で内面的成長を果たして聖騎士にクラスチェンジする。
「敵だと思っていた○○が実は生き別れの兄だった!」とか
「じつは月の民の血を引いていて…」など、
出自に関する設定もかなり似ている。

カインはそのライバルのポジション。
なんだか上手く言えないけど、こいつのカッコ良さはシェリルに通じるものがあるような気がする。
あと金髪。

一応ヒロインのポジションにいるローザは、「影が薄い」ことが最大の共通点だ。
貴族の生まれで、片親を亡くしている点も同じだが、何せ本編中、恋愛がらみ以外では全く活躍している記憶が無い。
何かあったっけ?
たしかホバー船を入手するイベントに絡んでいた気がする。
ホバー船はほら、メカだし、バルキリーみたいなもんだし、これも共通点ということでいいだろう。

さて、こうして見てみると、FF4の三角関係は、どう見てもランカたちの関係と一致しているといわざるを得ない。
ランカちゃんは主人公になれるだけの設定を持っているし、シェリルと激突して最終的に勝利すれば、アルト君のハートがゲットできるという道もおのずと見えてくる。

そう、つまりマクロスFの「F」は、FF4の「F」だったんだよ!
な、なんだってー!!

ちなみにFF4には「F」が3つもあるので、好きなものをチョイスしてくれて構わない。


以上、かなり無理矢理にこじつけてみたが、要するに、「ランカちゃんを主人公に据えてしまえば、そのままアルトと結ばれるだけの土台は作られている」ということなのだが、お分かりいただけただろうか。

そしてここまで書いておいて何だけど、河森監督は「同じ事は二度やりたくない」という人なので、こんな「どこにでもあるような」ストーリー展開は採用しないだろう。
こんな凡人の思い描くような予定調和な展開を、さらに超越したものを、我々の前に示してくれるに違いない。

と、いうわけで、今回はランカちゃんの肩を持ってみましたが、正直、どっちになっても劇場版は納得するんじゃないだろうかと思っております。
どうも今度のファンブックにまた後編のヒントが掲載されているようなので、
そちらをチェックしつつ、
ランカちゃんの「キラッ☆」を期待しつつ、


待とう!
サヨナラノツバサ!!