ささめきこと

t-akata2010-01-27

いい加減2009年の総括もしたいところですが、個々で語りたい作品たちもあるわけでして。

そんな中の一つが「ささめきこと」。
ささめきこと」は面白い作品なんだが、この作品の面白さについて語ろうとしたとき、私は自らの「百合観」についてさらけ出さなければならない。それを避けようとして主演の高垣彩陽を絶賛するのもいいんだけど、それだけでは片手落ちだ。というか、戸松遥といい豊崎愛生といい、どんだけスフィアをプッシュする気だ俺は。自分でも気づいていないだけで、実はミューレ(ミュージックレイン)の回し者なんじゃないだろうか。じゃあ寿美菜子はどうかというと、…うむ。「まだまだ伸びしろはあると思います。現役女子高生だし。」

話を戻して「ささめきこと」ですが、とりもなおさずこれは「百合」をテーマにした作品であります。したがってこれを「面白い」と表明することは、少なからず「百合」というものを好意的に捉えているという己の嗜好を吐露することであるからでしてああもうめんどくさいな好きです!百合!!

…ええと。
まぁ、そういうわけで楽しんで観ていたわけですが、百合好きと言っても私の場合は別に「レズ」が好きなわけではないので、「手をつなぐまでじゃ足りねぇ!」とか言うわけではないのです。エロの一ジャンルとして楽しんでいるわけではないのです。
だからといってこのアニメは百合好きにしかお楽しめないかと言うと、そうではありません。百合を「アリ」だと思っていれば抵抗無く作品に入れる。この程度に思っていただければいいんじゃないでしょうか。

 本作の主人公、村雨純夏は、長身であることにコンプレックスを持つ高校1年生。中学生からの親友(?)である風間汐に想いを寄せているが、伝えられずに悶々とした日々を送っている。当の風間は、「可愛い女の子が好き」と公言してはばからないため、その良き理解者であろうとする一方で、「可愛い」とは真逆な自分を気にして踏み出せないでいる。そんな二人を中心に、食いしん坊のキョリちゃん、クラス副委員長の朱宮くん、百合カップルの朋絵とみやこ、少女小説ファンの蒼井ちゃんと、個性的な面々が集まり、ちょっと変わった日常生活が始まる。

 魅力的なキャラクターたちが織りなすドタバタコメディーを楽しみつつ、淡くてちょっと切ない、女の子同士のピュアな心の交流に出会える。
人が人と心を通わすことを素直に描こうと思ったとき、こんなにも百合という題材は適しているんだなと思った。
「手をつなぐ」のは親友だから? それともそれ以上?
男子と女子とでは成立しえない「距離感」の表現ができる。
「女の子同士」への憧れというのももちろんあるんだろうけど、男子と女子とではどうしても分断されがちな「友達」「恋人」の中間を緩やかに進んでゆく様子が見ていて微笑ましい。

そんなシリアスで繊細なシーンがあったかと思いきや、魅力的なキャラクターたちの個性がいかんなくぶつかり合うコメディタッチのシーンも盛りだくさんで見逃せない。
自身も片思い中の純夏ではあるが、どういうわけか自分に向かっている「矢印」も多く、そこから巻き起こるドタバタが、声優陣の軽妙な掛け合いと相まって、面白くてしょうがない。
話を声優の方に移すと、主役である村雨純夏は、風間汐への秘めた想いに悶々としつつ、周囲に振り回されつつツッコミを入れつつ…という、大変に忙しい役どころであるが、高垣彩陽は絶妙なテンポで演じきっていると思う。
S.A.で「スケッチブックで話す役」だった時は「居る意味あんのか?」と思ってたけど。あと、こんなにガシガシ行けるタイプの声優なのに、大浦可奈子をやらせておくのは勿体無いと思うんだ。
レギュラーメンバーで認知度が高いのは、あとは加藤英美里斎藤千和ぐらいで、他のメンバーはここ3〜4年ぐらいのデビューという顔ぶれなのも、意外に感じるところだ。
特に、清水彩香は朱宮くんの「男子でありながら」「か弱い」ところをよく演じていると思うし、牧口真幸は「一途がゆえにお人好しな純夏を振り回す」役どころを好演している。
どちらも純夏に片思いするキャラクターなんだが。
こうしたフレッシュな人材が今後どういった活躍を見せてくれるのか、こちらにも期待したい。

とはいえやはり高垣彩陽の演技力には目を見張るものがある。
純ちゃんの「男子」っぷりをニヤニヤしながら楽しもう!「ささめきこと」!