「王」のモヂカラを操るサムライ

t-akata2010-02-18

新戦隊「天装戦隊ゴセイジャー」も「まぁ、こんなもんか」と、華々しく普通にスタートを切った本年度のスーパー戦隊シリーズですが、まだまだ熱気冷めやらぬ「シンケンジャー」の劇場作品をようやくご紹介です。
つーか、たかだか5本語るのに一体どんだけ時間かけてんだ俺は。


本作「侍戦隊シンケンジャーvsゴーオンジャー 銀幕BANG!」は、スーパー戦隊シリーズ毎年恒例の「vsシリーズ」最新作。
「vsシリーズ」とは、スーパー戦隊が前年度の戦隊と共演するVシネマシリーズで、超力戦隊オーレンジャーの「オーレvsカクレンジャー」から続くおなじみのオリジナル作品である。(ちなみに源流にあたるのは「ゴレンジャーvsジャッカー電撃隊」であるが、当時はまだシリーズ化されていなかったので、本文内では八手三郎原作シリーズについてのみ言及する)
「vs」といっても、必ずしも戦うわけではない。でも戦うのもある。
その辺は「夢の共演」の部分がメインなので、シナリオによりけりですが、戦おうと戦うまいとに関わらず、「先輩戦士たちが助けに来たぞ!」というのはやはり特撮ファンとしては燃えるわけで。っていうか、そういう展開はむしろライダーやウルトラマンに多くて、戦隊シリーズではあんまり無いですけど。


「vsシリーズ」は、前々作にあたる「獣拳戦隊ゲキレンジャーvsボウケンジャー」までVシネマとして展開していたが、前作「炎神戦隊ゴーオンジャーvsゲキレンジャー」から劇場版として公開されている。その辺は大人の事情がメインらしいですが、大スクリーンで「2大戦隊夢の共演」を楽しめるというのは良いことだと思います。


ストーリーや両作品間の位置づけは極めてシンプルで、「シンケンジャーが、並行世界から敵を追いかけてきたゴーオンジャーが出会う」というもの。
シリーズのパターンとして、序盤はお互いが「正義の戦隊」であるにもかかわらず対立してしまうという様子が描かれるが、今作に限っては、シンケンジャーが比較的マジメで、己の使命を重んじて戦っているのに対し、ゴーオンジャーは自分の思ったままに勢いと気合で戦うという、本来のスタイルが真逆であるため、このぶつかり合いからしてすでに面白い。シナリオはレッド同士のぶつかり合いからお互いを理解するところに焦点が当てられており、他の登場人物のファンには物足りないかもしれないが、「走輔と丈留が出会ったらどうなるか」というシチュエーションを、二人の個性をいかんなく引き出してぶつけ合わせることで魅力的に描き切っているので、キッズでなくとも十分に楽しめる内容だろう。
レッド同士がいがみ合ってる間に悪の組織の方はちゃっかり結託し、強大な力を手にして、両戦隊たちは一転、ピンチに陥ってしまう。これもまたお約束のパターンだが、それを乗り越えうようとする中でお互いを認め合えるようになってゆくという、胸のすく展開がたまらなく心地よい。二つの戦隊が固い絆で結ばれたところで、二大戦隊13人が勢ぞろいしての「変身」から「名乗り」「共闘」「ロボ戦」という流れは、もうエンターテイメントそのものである。

本作の評価したい点として、もう一つは「旧戦隊がそんなに主張してこない」点にある。「過度に主張しない」というのは、「ないがしろにされている」というわけではない。主役はあくまでもシンケンジャーであり、彼らが「全くスタイルの異なる正義の戦士と出会ったらどうなるか」という点から物語は描かれ、ゴーオンジャーたちはそういった「シンケンジャーとの相違点をわざわざ説明する必要のないキャラクター」として、効果的にシナリオの中に組み込まれている。これは、ともすれば「旧戦隊の後日談か同窓会」的な方面に傾きがちなvsシリーズの中にあって、「旧戦隊はあくまでもゲスト扱い」という点が重視されているように感じられ、本作を単体の映画として面白くさせている要因だと思われる。


とはいえ、等身大、ロボ戦、ともにオリジナルの合体技があったりと、シリーズのファンが思わずニヤリとしてしまうような要素ももちろんあります。
ゴーオンジャーのファンもシンケンジャーのファンも大人も子どもも満足できる名作だと思うので、これは劇場で観て損しない映画だと思います。


熱き「スーパー戦隊魂」が受け継がれる瞬間を見逃すな!
映画館で、僕と握手!


(映画を観るうえで、強いて注意事項を挙げるならば、シンケンジャー第四十四幕から最終幕までの5話を観る前か、観終えてからの観覧をお勧めします。どちらも秀逸な話ですが、面白さのベクトルが違っていて、気持ちを切り替えて観賞する必要があると思うので。逆に言えば、シンケンジャーという作品は、それだけ違った魅力を味わえる良作だったとうわけですね。)


さて、タイトルで誰のことを指しているのかが分かった方は、かなりの戦隊通です。
「あともう少しで思い出せるのに…」という人には、「レンジャーズストライク」からこのテキストを。



「サムライだって? 違うな。僕はドリンを守るナイトさ!」