「仮面ライダーW」を玩具連動という観点から考察する(というか感想)

仮面ライダーW

好評のうちに終了した仮面ライダーW
本作を平成ライダーシリーズの中でも屈指の名作と成さしめた要因については、「脚本」「設定」「役者陣の好演」「前作の不評からの反動」などなど様々あるだろうが、それは諸々のブロガーに任せるとして、ここではWを取り巻くツールたち、とりわけ玩具展開された商品と本編との連動に焦点を当てて絶賛してゆきたいと思う。


玩具中心に仮面ライダーWの物語を振り返ってみると、過去の平成ライダーシリーズと比較して、かなり「玩具の仕様」を意識したシナリオや演出、設定を随所に盛り込んでいることが分かる。


 仮面ライダーW玩具の最大の特徴は、「変身」「フォームチェンジ」「必殺技」「ガジェットの使用」さらに「敵怪人の変身」にまで用いられる「ガイアメモリ」だ。ボタンを押すことでメモリの名前を発声し、さらにベルトや武器に装填することで別の音声が鳴る、なりきり遊びの雰囲気を盛り上げる必須アイテムだ。
 ガイアメモリが物語との連動という点で優れていた点は主に2つある。
一つは、いわゆる「ソフト」であるところのメモリの側に音声を仕込んだ点。これにより、豊富な音声バリエーションを確保した上で、ネタバレ要素を少なくすることができた。(例えば、剣のブレイラウザーは、購入した段階である程度技の種類が分かってしまう。逆にディケイドのベルトは設定上あらゆるライダーに変身できることになっているが、収録音声の関係で実現していない)
 二つ目は、敵側の怪人の変身にも使われていたこと。そもそも「ライダーと怪人が同じアイテムを使って変身する」という設定は、ライダー作品の中でもWだけだ。しかしながらこの「メモリで変身する」という共通項は、物語の核心に迫る鍵としての存在感を序盤から匂わせていたし、実際そのように機能していた。
 あと補足すると、単純にメモリを構えて音を鳴らすのは非常に楽しい。シンプルながら実に再現性というか「なりきり度」の高いアイテムに仕上がっている。
 

このガイアメモリを筆頭に、Wには玩具の仕様に配慮した演出や設定が随所に盛り込まれている。
以下箇条書き的に挙げる。
 序盤の禁じ手「ダブルマキシマム」。Wの必殺技であるところの「マキシマムドライブ」は、メモリをベルト横のマキシマムスロット、またはメタルシャフト・トリガーマグナムに装填することによって発動させることができる。つまりメタルまたはトリガーフォームの時はマキシマムスロットが2つあり、「これ同時にやったら強いんじゃね?」というのは玩具を手にした誰もが思うところであるが、これは「強いが故に負担が大きい」という禁じ手とされていた。(後にWのパワーアップと二人の成長?を演出するために解禁された)
 エンジンメモリの「エレクトリック」。エンジンブレードに付属する「E」のメモリには「ジェット」「エレクトリック」「スチーム」の能力が持たされている。大抵は戦闘で使われて終わるものだが、「インビジブルドーパント」の回では事件を解決する鍵として活躍する。また、この回ではこのインビジブルドーパントを捕捉するため、デンデンセンサーが「ちゃんと」活躍した事も書き添えておきたい。
 「アクセルタービュラー」。アクセルのバイク形態は、ガンナーAの他にもWのバイクの後部パーツとも互換性がある。通常こういったビークルを活躍させるためにはCG処理が必須であり、本来滅多に活躍しない、もしくは未使用のまま終わることが多いが、番組終盤のテラードーパントとの戦いでアクセルに飛行能力を与えて激しい空中戦を披露し、クライマックスに向かう「総力戦」を盛り上げた。
 「ファングメモリ」と「エクストリームメモリ」:言わずと知れたW強化フォームのためのアイテムであるが、平成ライダーシリーズにおいては、「わりと唐突に入手」して「ただ強くなっただけ」という、単純に部品扱いされるだけのケースが少なくない。そうした中でこの二つのメモリは、翔太郎とフィリップが絆を深め成長することによって力を与えるという、物語の中でも重要な役割を担わされている。またこれらのメモリを使った強化フォームの設定についても、「ファングジョーカー」は普段とは逆にフィリップが変身することで、「CJX」の方は文字通り「2人で1人」に変身することで、「より強くなった」ということを分かりやすく示しており、物語を盛り上げる要素として絶妙に昇華されている。


以上、印象深かった演出を演出を列挙してみたが、まだまだこういった「心憎い」演出はあるので、機会があればそちらに注目してご覧いただきたい。


平成ライダーバンダイ商品の30分CMである」。夢の無い話かも知れないが、実際番組はこの言葉が表わす通りに作られている。新しい玩具を企画してからそれを「どうすれば売れるか」というところからシナリオ作りは始まるのだ。それゆえに平成仮面ライダーは、そうしたスポンサー側の提案する新商品とストーリーとの間の整合性が不十分なまま進行することも珍しくなかった。唐突に新キャラや新アイテムが登場したと思ったら、ぞんざいな扱いを受けたまま消化不良に終わることが多かった。
 そうした中でこのWの玩具は、物語の中で役割や活躍の場を可能な限り与えられ、作品そのものに貢献している。
 大人なら誰しも、新キャラや新アイテムの登場には「スポンサーの意向が働いている」と頭のどこかで考えるものだろう。だがWのアイテムは物語の中で確固たる「必然性」を与えられ、このことにより我々大人でも一旦「スポンサー」という考えを遠ざけて物語の中に心を預けることができたのではないだろうか。
 キャラクターマーチャンダイジングの宿命「玩具商品と物語の間を埋める困難さ」に正面から立ち向かい、「上手く物語の中に落とし込めば、相乗的に話を盛り上げることができる」と証明した好例が仮面ライダーWだろう。
 仮面ライダーウルトラマンスーパー戦隊と並ぶ歴史ある特撮ヒーローシリーズである。本作を(対スポンサー的に)模範的なケースとして、今後ともシリーズが続くことを願いたい。


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