劇場版ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-

劇場版ガンダム00

※この記事には映画の核心に迫る内容が記述されている上に作品の解釈について語っています。

イノベイターコーディネイターニュータイプの先へと向かったのか


TVシリーズ機動戦士ガンダム00」の続編にして完結編。
刹那たちソレスタルビーイングの戦いによって一応の平穏を取り戻したかに見えた地球圏に、未曾有の事態が迫る。彼らはこれに対しどう立ち向かうのか…


前作のクライマックスで人類の革新「イノベイター」へと進化し、調和への道を示した刹那。本作では、外宇宙からの脅威と対峙することで、人類がイノベイターへと変革するさらなる意味が明らかになる。


作品の表面的な感想を述べると、新規メカたちもカッコ良く活躍するし、前作までのキャラクターたちもそれぞれ見せ場が用意されていて、シリーズのファンなら見ておいて損の無い映画だと思います。
まぁ新キャライノベイターが思わせぶりに出てきたけど完全に噛ませ犬だったり、あの人はやっぱり死ななかったり、期待を裏切らない役割分担でそこは安心して見られると思います。



以下いろいろ見て思ったこと
●そもそもの話。
 本作は「外宇宙から知性体がやってくる」というシリーズでは異色の設定であり、TV本編でたびたびイノベイターの役割について「地球外知性体との交渉のため」のように多少匂わせてはいたものの、それ以上の伏線めいた演出は無く(あって回収しきらないというのも困りものですが)、結果的に劇場版で「唐突に降ってくる」という展開で、多少無理があった気もします。地球圏の統一が進行しているどのタイミングでも自由に設定できるし、本作自体を「パラレルワールド」に設定することもできてしまう、結構乱暴な側面があったことは否めないと思います。なので前半の地球外知性体「ELS」への各機関の対応を見せる一連のシーンは、SF映画の序盤を見ているような感じでした。
 また、劇中マリナ姫が自分の命を狙った相手に対し、あくまで対話を図ろうとするシーンがあります。これはマリナのキャラクターと他者への向き合い方を説明するシーンであり、ラストの刹那とのシーンにつながる重要なポイントでもあるのですが、同時に「地球圏はまだ完全に統一されてはいない。でも全人類に対する脅威が現れたら、そりゃあまとまらざるを得ないよね」とも受け取れかねない場面となってしまっていて、そこは少し残念でした。


イノベイターによって「戦争を克服した先の人類とは何か」を示したガンダム
これまでのガンダムシリーズには、人間を超えた存在として大きく2つ「ニュータイプ」と「コーディネイター(S.E.E.D.?)」が登場しました。どちらも争いの要因の一つとなり、戦闘の道具となり、そして「人類に調和をもたらす鍵」として描かれました。超人然とした身体能力・MS操縦能力はもとより、「逆襲のシャア」のクライマックスでサイコフレームの共振が見せた人々の意識を共有させるビジョン、SEEDの劇中セリフとして語られるのみだった「コーディネイターは外宇宙の知的生命体と人類の間をつなぐ調整者」などの要素が、本作におけるイノベイターの発想の土台になっていることは間違いありません。
その上で、「戦争を乗り越えるための存在」であるニュータイプコーディネイターのさらに先、人類すべてが調和した先にあるべきものは何かを示そうとしたのが「イノベイター」という存在だったのではないだろうか。


イノベイターはエピローグで人類の進化した姿として描かれる他、刹那に至ってはELSと人類の架け橋となるべく、ELSと同化した存在として地球に帰還する。
この姿には、程度の差はあるがマクロスFにおいてバジュラと人類の架け橋となるべく、腸内細菌を宿してよりバジュラに近い存在となったランカやシェリルの姿が重なる。言葉を介さなくても意思を通じ合わせられるという点においても共通している。
ここから導き出されるのは「異なる者同士が通じ合うためには、自らが変化することを受け入れなければならない」ということではないだろうか。しかもにガンダム00に至っては、マクロスFが「異種間の仲介者の誕生」に留めていた所からさらに進んで、「全人類のイノベイター化が進行している」という描写で、明確に人類全体が変革することを“是”として語っている。


「人間の可能性」みたいなことを言っておきながら「分かりあうためには今の人類ではダメだ(極論)」という結論に至ったことに批判はあるだろうが、ガンダムシリーズで「戦争を克服した先の人類」を描こうとした試みは評価していいんじゃないだろうか。
少なくとも「敵は先遣隊に過ぎなかった!何とか追い払ったけど、人類の戦いはこれからだ!」とか、「まとめて滅殺→やったぜ!!」よりは断然良かったと思います。
ただそれはマクロスF同様、既存の人類の枠組みを超えてしまったものを提示しているし、そこに賛否が分かれるというのは仕方の無いことだろう。
少なくとも私はこのテーマを取り上げたということで、TVシリーズで「なんかガンダムWぽいことをやろうとしてスベってる」という指摘は帳消しにしていいんじゃないかと思いました。


まぁ当分こういうテーマを扱うガンダムはやらないだろうしやらない方がいい、しばらくは宇宙世紀の外伝とか人類間の戦争にテーマを戻して、意欲的な作品は作らなくてもいいんじゃないかなと思いました。


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