男の俺が「薄桜鬼」を全力で絶賛する!
「美形の新選組隊士たちの…」
という紹介文の書き出しだけで、世の大半の男アニオタは「切る」と選択するであろうこのジャンル。
「腐女子の燃料アニメのために1分の時間も割けるものか!!」という叫びが聞こえてきそうだ。
ごもっとも。
しかしながら百聞は一見にしかず。
1話だけでもご覧いただきたい。
「クオリティが高い」この一点において、アニメをたしなむ者ならば、
視聴に耐える十分すぎるだけの理由があると分かるだろう。
あと、(原作知らないけど)男色描写はありません(第3話時点)。
言わずと知れた新選組のお話なので詳細は特に語るべくもないが、
本シリーズのオリジナルキャラクターでありヒロイン(プレイヤーキャラ?)である
「雪村千鶴」からの視点を中心に、物語は進んでゆく。
千鶴は、京に行ったきりの父を訪ねて京都に入るが、そこで新選組隊士と浪士との切り合いに遭遇し、新選組の屯所に連行されてしまう。
新選組も父を捜していることがわかり、「隊の中では男の振りをすること」を条件に、住み込みで隊士たちの世話をすることに。
やがて千鶴たちは、幕末という、激動する歴史の渦へと足を踏み入れてゆく…。
監督はアニメ版「イタズラなkiss」のヤマサキオサム。
アニメーション制作は「ひぐらし」「うみねこ」などでおなじみのスタジオディーン。
キャラクターデザインは中嶋敦子。
音楽は大谷幸。
音響監督は岩波美和。
いずれ劣らぬベテランぞろいだ。
(どうでもいいけど、スタジオディーン、中嶋敦子、大谷幸と並べられると、「逮捕しちゃうぞ」を想起せずにはいられない昭和末期のアニオタがひとり)
そして主要キャスト陣も、土方歳三役に三木眞一郎、沖田総司役に森久保祥太郎、近藤勇役に大川透などなど、豪華な面々が名を連ねる。
そして主人公の雪村千鶴には、これまたベテランの桑島法子が、可憐でありながら芯のかよった少女を好演している。
ここまで並べられた上に「大人気ゲームのアニメ化!」とくれば、
すでに放映前か第1話で失速していておかしくないのだが、「薄桜鬼」はそうはいかなかった。
端正に描き分けられた隊士たちの表情。
緊張感あふれる池田屋襲撃の殺陣シーン。
「女子向けゲームのアニメ化作品」という出自でありながら、その内容には一点の「媚び」も感じさせない。
そう、彼らが振るう刃のように。
歴戦のスタッフ・キャスト陣の手によって「研ぎ澄まされている」のだ。
考えてもみればこの「新選組」というジャンル、数多の作品たちが名乗りを上げては破れ去って行ったジャンルであることは想像に難くない。
そこに打って出る以上、例えゲームで名を上げていたとしても、中途半端な仕上がりで臨むわけにはいかないということだろう。
言っちゃあ何だが、これを女子だけのものとしておくのは非常に勿体無い。
俺たち男にだって、一途でひたむきな千鶴ちゃんを愛でる権利はあるはずだ。
俺たち男にだって、絵にかいたような男ツンデレ・土方歳三のデレゆく様を愛でる権利はあるはずだ。
…とまぁ、ちゃんと観れば楽しめるであろう、今期随一の高いクオリティを誇る「薄桜鬼」。
「女子向けかよ」とか「独自解釈の新選組かよ」とか食わず嫌いせずに、一度観てみることをお勧めいたします。